トマーシュ・ロシツキー
Tomáš Rosický

優雅なボールさばきとチームの攻撃を操る能力から「小さなモーツァルト」と称されるチェコのファンタジスタ。

軽やかな身のこなしと守備意識の高さが特徴だが、その無理をしないプレースタイルはよく言えば気のきく選手だが敗戦時には批判の的となることも。得点を量産するタイプではなく本人も「毎試合ゴールを期待されても困る」と述べているが、時折放つミドルの威力は素晴らしい。

プラハに生まれ、8歳で地元の名門スパルタ・プラハに入団。1998/99から国内リーグを3連覇し、2001年夏に1800万ユーロでボルシア・ドルトムントに移籍する。ドルトムントでは最初のシーズンからチームの中心を担い、2001/02にはリーグ優勝を成し遂げた。しかし財政難のためドルトムントは彼を売却せざるを得ず、2006/07開幕前にアーセナルに加入した。

アーセナルでは主に左ウィングとしてプレー。持ち前のテクニックとインテリジェンスを見せていたが、2008年1月に行われたニューカッスル戦で左膝の腱が断裂するという重傷を経験。当初は「2週間ほどで復帰できる」と診断されていたが、なかなか回復の兆しを見せず、ドイツでは二度目の手術を経験。その後、苦しいリハビリ生活を送った。自身は今でもこの日振り返ることを嫌がるほどで「もし完治しなかったら引退する」とまで決めていたそうだが、この「割り切り」が功を奏したのか、09/10シーズンに念願の復帰に成功。左右のウィングとセントラル・ミッドフィールドをこなし、元気な姿を見せた。

また、11/12シーズンはセスクやナスリなど、中盤の要がチームを去ったこともあり、これまでの役割がやや変化。よりファン・ペルシーに近いエリアで動くようになり、ディフェンスラインと中盤のラインでボールを受け取るような動きが増えたことで、自身のキャリアの中でもトップクラスのパフォーマンスを披露。シーズン終了時には本人も「驚いたし、正直迷った」と振り返るほどの驚愕オファーが他国から届いたが、アーセナルでのプレーを望んでいたことにより、契約延長を選んだ。

趣味はギターで、アーセナルで負傷していた18ヵ月間で練習したと話している。